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『夏目漱石 非西洋の苦闘』(なつめそうせき ひせいようのくとう)は、比較文学の研究者平川祐弘の評論である。1973年に『新潮』に発表された2編と1976年に『すばる』に発表された評論を集めたもので、1976年、新潮社から出版された。著者は自らも留学経験を持ち、森鴎外の留学を軸にした評論『和魂洋才の系譜』を執筆した。本書の後、ラフカディオ・ハーンの研究書や『漱石の師、ジェームズ・マードック』などの著作も執筆する。夏目漱石にとっての西洋文明社会、西洋文学とが論じられ、後進国から先進国に留学した知識人のコンプレックスや、俳句と英詩の伝統の違いなどが論じられる。 ==内容概要== *第一部 クレイグ先生と藤野先生 --漱石と魯迅、その外国体験の明暗-- * ロンドン留学の漱石の日記、手紙などから後進国から文化の先進国にきた人間が過度に感じる劣等感、不快感が検証され、漱石がロンドンで個人教授を受けたウィリアム・クレイグとの交流がその救いとなったことが論じられる。ウイリアム・クレイグのシェークスピア研究に対する姿勢や価値が紹介され、漱石が『クレイグ先生』で描いた、漱石とクレイグの交流が暖かであったことが論じられる。日本に留学した魯迅もまた日本人の偏見などによる不快感を持ち憂鬱な留学生活を送ったことを魯迅の『藤野先生』の記述に追い、藤野先生との交流が紹介される。留学中の魯迅は日本の文学には注目していなかったが、漱石だけには感心していたことが紹介される。『クレイグ先生』を翻訳し、1923年に周作人名義の『日本小説集』として出版し、1926年に『藤野先生』が書かれた。魯迅が漱石の留学生活に共感しこと、『藤野先生』に見られる漱石の技法の影響などが論じられる。 *第二部 漱石のあばたづら、鼻、白シャツ --執筆衝動の裏にひそむもの-- * 漱石の容貌や服装、金銭や博士号といった学者の栄誉に関するこだわり、コンプレックス(「奇妙で執拗な偏向」)が考察される。 *第三部 詩の相会うところ、言葉の相結ぶところ --漱石における俳諧とシェークスピア-- * 第一章「シェイクスピアと俳諧」では、東西の審美感の比較が検討される。小松武治訳のラムの『シェイクスピア物語』につけた漱石の序文『子羊物語に題する十句』を通して、シェイクスピアの戯曲の生々しさと俳句の世界の軽さが比較される。一方でキーツやワーズワースらの西洋詩の中に漱石は共感できるものを感じていたことも示され、例えば菫に関する、東西の審美感の比較が漱石の俳句を通して検討される。 *第二章「日本美の自己主張」では漱石の日本人の文化のアイデンティティーを求める気持ちの変遷が紹介される。1900年代に日本の論壇でもニーチェを論じることが流行し、漱石も英訳本の『ツァストゥストラ』を読み、欄外余白に書き込みに書込みをした。それらの記述や『吾輩は猫である』や『草枕』の記述が考察され、近代的な自意識の衝突という問題について漱石が東洋的な価値観で批判したことが紹介され、『文学論』の中の俳句と西洋詩の比較が紹介される。日本人の文化的なアイデンティティーを強調する気持ちは『草枕』や『虞美人草』などの作品でことさら意識されているが、後年はそれから離れていった。 *第三章「クレオパトラと藤尾」では漱石の描こうとした女性像が論じられる。『虞美人草』に登場する西洋的な自我を持つ女性の藤尾に、漱石はシェークスピアの『アントニーとクレオパトラ』のクレオパトラを意識的に重ねあわせたことが紹介される。漱石の西洋女性への感情をもたらした背景が検討される。漱石が、西洋的女性への敵意をもって執筆したにもかかわらず、藤尾は当時の社会に好評を持って迎えられた。 抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「夏目漱石 非西洋の苦闘」の詳細全文を読む スポンサード リンク
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